無断欠勤をした社員を解雇する際の留意点について解説します。
目次
解雇する際の注意点
従業員を解雇する際には
- 客観的に合理的な理由
- 解雇が社会通念上相当である
ことが必要です。
また、懲戒処分をするには
就業規則に懲戒解雇事由を明記し、
それに従って処分をすることになります。
就業規則に無断欠勤を定める際の注意点
就業規則に無断欠勤について記載する際には、
届け出はしたものの正当な理由のない欠勤も無断欠勤に該当する旨を明記しましょう。
(「無断欠勤」が「届け出のない欠勤」に限るか、それとも
「届け出はあるが正当な理由がない場合」も無断欠勤に含まれるのか見解がわかれるため。)
「無断欠勤」に該当するかどうかの判断
また、過去の判例(紫苑タクシー事件)では、行われた欠勤が無断欠勤に該当するかどうかの基準が示されています。
無断欠勤に該当するかどうかは、形式的に判断するではなく、
- 使用者の責めに帰さない理由による欠勤であるかどうか
又は
- 労働者に欠勤しない選択の自由があるのに、あえて行った企業秩序を乱す欠勤であるかどうか
という要件を必要とします。
解雇の有効性
解雇をする際には上記で述べたように、
- 客観的に合理的な理由
- 解雇が社会通念上相当である
ことが必要ですが、
過去の裁判例をもとに具体的に判断基準を挙げてみると、
- 欠勤の回数・どのくらいの期間・正当な理由があるかどうか
- 欠勤が与える業務への支障
- 使用者からの指導注意の程度
- 注意・指導を受けての改善の見込はあるか
- 勤務成績
- 過去の同種事例が行われたときの対処との均衡
などをもとに総合的に判断するものと思われます。
判例の紹介
無断欠勤を理由として解雇をおこなった際の、解雇の効力について、裁判例を紹介します。
東新トレーラーエキスプレス事件(東京地裁 H4.8.25)→解雇有効◯
入社して1年間で具体的な理由を明らかにぜずに無断欠勤が通算70日になる社員を
再三注意・警告したのに改善されなかった場合の懲戒解雇は有効。
太平設備機械事件(名古屋地裁 S37.5.28)→解雇無効✕
無断欠勤の日数が19日であったが、会社は厳格に出勤管理をしていなかった場合など総合的に判断して、
解雇を無効。
栴壇学園事件(仙台地裁 H2.9.21)→解雇無効✕
大学教員が大学の春休み期間中に無断欠勤をした事例。
当該欠勤は就業規則の懲戒解雇自由に該当するが
春休み期間中は講義等もなく、大学の業務に支障を来さなかったため、
懲戒解雇は無効。
日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁二小 H24.4.27)→解雇無効✕
精神的な不調による無断欠勤は慎重に対応すべき
精神的な不調による欠勤を40日した社員に対する諭旨解雇は無効。
最高裁は、
精神科医による健康診断を実施するなどした上で
診断結果に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、
その後の経過を見るなどの対応を取るべき
とした。
まとめ
無断欠勤した社員を解雇する際には
無断欠勤が何日であるかという形式的な判断をするのではなく、
上記の判例や、判断基準を照らし合わせて総合的に判断すべきです。
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【編集後記】
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