賞与の性格の一つとして、将来に向けて社員に頑張って欲しいという意味合いもあります。
そういった気持を込めて支給している事業所さんもいると思います。
しかしそういった思いとはうらはらに、賞与支給後すぐに退職してしまう社員さんも中にはいます。
会社は受給後すぐに退職をする社員の賞与を減額することは可能なのでしょうか?
目次
賞与とはどういったものなのか?
賞与とは、月々のお給料とは別に、会社の業績や個人の成績などを査定の上、支給するものを言います。
支給する際の計算方法は、一般的には業績、勤務成績、勤怠状況などに応じて支給額、支給率を決めます。
また、賞与は、就業規則などに支給条件、支給回数、査定期間など
の定めがあり、これに基づき支給される場合は
労働基準法の「賃金」に該当し、法律的に
保護されることになります。
減額の合理性
結論から言いますと退職予定者の賞与算定をする際、就業規則を根拠として、
退職をする社員と退職をしない社員の賞与額に差を設けることは、可能であるといっていいでしょう。
だたしその「賞与額の差」については慎重になるべきでしょう。
退職予定者の賞与減額規定の合理性が争われた例として、
ベネッセコーポレーション事件があります。
この事件をかんたんに説明すると
賞与の計算方法を、(入社してまもないグループの計算方法)
- グループA(賞与をもらってからも、今までどうり会社で勤めるグループ)は基礎額の4ヶ月分
- グループB(賞与受給後に退職を決めているグループ)は4万円×在職月数
と就業規則に規定していました。
そして、グループAに属する社員が賞与を受領してすぐ退職を申し出たため、
会社は受け取った金額と、パターンBの計算方法で計算した金額との「差額」を退職した社員に対して
請求(「請求した差額」は賞与全体の80%程)しました。
しかし、判決では、「将来に対する期待の程度の差に応じて退職予定者と非退職予定者に
賞与額の差を設けることは不合理ではなく、これが禁止されていると解すべきではない。」としました。
つまり、この判決は、退職する社員の賞与を減額することには合理性があり、減額可能と捉えることができます。
また、続けて判決は、
「過去の賃金とは関係のない純粋の将来に対する期待部分が、
被告と同一時期に入社し、同一の基礎額を受給していて、年内に退職する予定のないものがいた場合に、
その者に対する支給額のうちの82%あまりを占めるものとするのはいかに在社期間が短いといえど肯定できない。」
としました。
つまり80%返還しろはさすがにやり過ぎ。賞与の将来に対する期待部分は80%もないということです。
そして判決では、様々な諸事業を考慮して20%の返却が妥当としました。
就業規則に規定は新しく設けることは可能?
では会社は、このように退職を予定している社員する対抗策として、
「退職を予定している社員の賞与を減額する」という規定を就業規則に新たに設けることはできるのでしょうか?
判例(秋北バス事件 最高裁 S43.12.25)をもとにかんたんに説明すると、
就業規則の不利益の変更は、
- 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、
- 使用者側の変更の必要性の内容・程度、
- 変更後の就業規則の内容自体の相当性
- 代償措置、その他関連する他の労働条件の改善状況など
を総合考慮して判断すべきとしています。
ですので就業規則に規定を設定するに当たっては慎重に対応すべきです。
そして仮にそのような就業規則の規定を策定したとしても、
判例をもとに考えると
- 入社してすぐの社員に限定をする
- 10~20%の減額とする。(大幅な減額規定を設けることは避けるべき)
といった規定が妥当が望ましいかと思います。
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【編集後記】
今日は業務改善助成金という助成金のセミナーにいってきました。この助成金結構使えそう!
後日記事にしようと思います。